生と殺
加藤さんとのお話の後、かねてから興味のあった本橋成一氏の「屠場」写真展を覗いてきました。
屠場(とば)とは、家畜を殺して市場に並べられる状態に解体する場所です。
僕らが日常的に口にしている食肉のできるまではその現場が長くタブー視されており、近年になってようやくスポットを当てることが許されてきたように思えます。
大阪にある食肉の生産現場で撮影された、それだけ見たらホラーでしかないような瞬間は、実は僕らの生命活動にとどまらず食事の享楽に直結したもので、感じ取るべきは表面的な恐怖とか惨状ではなく僕らの命はこの上に成り立っているといるという事実です。
上品なレストランで仔牛の肉にナイフを入れる前にあどけない声で断末魔を残した体を、食禁前の生レバーをむさぼる前に湯気の立つ腹からそれを掻き出す様子を目で知り、そのうえで感謝して食してほしい。
そんな強いメッセージを受けた写真展でした。
世の中に知らないことは多いけど、身近なものほどできるだけ知っておきたいものです。
たとえそれが目を覆いたくなるものであっても。