映画の日を利用して『ted』の次に梯子したのがこれ。
タイトルだけだとパイ職人の人生しか連想できなかったのですが、CMやPRでじわじわ興味が盛り上がって観たくなったのです。
この映画観て感じたことは二つ。
一つは、人間って孤独が一番の敵なんだなあということ。ここでいう孤独とは、周囲に自分以外の時間軸が一切存在しないことであり、上京したばかりで知り合いがいないとかの孤独とは全然違います。
周囲がすべて自然という環境のなかで生きるということは、いつ来るのかわからない死を受け入れることとそれに抗うモチベーションという相反した感情を抱えることであり、その両方は自分以外の生命に大きく影響されていることが、映画の中とはいえ一人の漂流という状況に移入すればたっぷり味わえます。
主人公パイの場合、その唯一のモチベーションを与えてくれるのがトラだったわけですが、この話は二人の関係がファンタジックな展開で劇的に変化するとかそういう内容ではなく、この奇異な時間を過ごした人間の思想や行動の変化の観察が主軸なのでスペクタクルは期待しないように。それぞれ観劇後の印象はみんな違うんだと思います。それがこの映画のキモですね。
一方、もう一つ感じたことは「もうCGってできないことないいんじゃないの?」て技術的感想。
曲がりなりにも「CGでどうにかなるんでしょ?」て素人の言葉が一番嫌いな元CGデザイナが言うのもなんだけど、もうどこまでが実写なのか全然分かりませんでした。クラゲに包まれて飛び跳ねる発光クジラとかはともかく全編通じて出てくるトラ。アレ、CGだそうです。ウソでしょ?いや、作り方全然わからないし、すんごい苦労があるんだろうけど、一度も制作現場に関わったことない人はそりゃ「CGでどうにかなる」とか思うよ。逆に、リアルになればなるほどその苦労と反比例してどんどん価値が下がる先行きが推してわかりすぎることがやるせない。アニマルタレントもそのうち不要になるんでしょうね。
漂流物のテーマとして孤独と戦うという点では僕の中での名作『キャスト・アウェイ』と同じなので、たぶん、孤独にどこまで抗えるかってことが漂流では生き残るカギになるんでしょう。
よって、飛行機や船での長旅の際には、万が一備えてみんな脳内彼女(彼氏)とか作っておくといいと思います。
ちなみに、文明の中での生きてる前提では、人間の最大の敵は「面倒くさい」だと思います。
こいつのせいで世の中の8割の人はできることやってないし社会全体がもったいないことになってる。
僕も含めて。