おおかみこどもの雨と雪
劇場で観るはずが、いろいろあって後回しになり、結局DVDでの視聴となりました。
結論から言ってしまえば、今回はちょっと残念なレビューに。
主に、周囲からは家族や子育てに関する感想が多かったので、そこを意識して観たのがちょっと逆効果だったかもしれません。
大筋は、狼の父と人間の母の間に生まれた二人の姉弟の物語です。この二人の成長と自立の物語。…なんですが…
ウチの娘はもうすぐ六年生なので、物語の多くを占める時期のおおかみこどもたちの年齢と同じくらいの年齢です。
その子と生活をしている視点からすると、劇中の葛藤も考えも発言の内容も、あの年齢にしては大人すぎることが気になりました。
創作物語のストーリー展開の一部として作り手の大人が当てはめる子供の年齢がいささか低すぎる傾向はこの作品に限ったことではないんですが、この世代の子供が大人に見せてくれるのは"大人になりかけの未熟さ"ではなく"大人が忘れてしまった感覚"が圧倒的に多いんで、ちょっと不自然。子供を大人のミニチュアとしてモチーフとするなら、思春期以上が適切だと思います。
そりゃファンタジー(おおかみのこども)なんだから、と言われればそれまでなんだけど、普段、大人と子供の考えを隔てる距離の広さに悩んでいる立場としては、その辺に大きなズレがあることで一気にさめてしまうんですね。
同時に、女手一人で二人の子供、ましてや半分ケモノなので周囲の助力や理解、医療や保護が極めて手薄な環境で育てるハードさは、8年間一人娘を抱えて未婚の母をやっていた妻に聞いてきた話からすると全然足りない。
これが中世だの想像世界だのならともかく、現代の東京都国立市が舞台だとハッキリしてるので余計に際立ちます。
結末もきれいにまとめすぎかなあ。狼の子供だからってことなら、まあそうなのかなあって思うしかないけど、親もああ簡単に納得できるもんかなあ。
物語も演出もかなり洗練されたものではあると思います。
ただ、完全に僕が視聴者として不適切でした。もっと見るべきは別の場所だとはわかるんですが、目が行くのがそっちになっちゃうんで…。
むしろリアルさで高い評価を与えられるとすれば、絵的な情緒は残してとてつもないリアリティを持ったCG映像ですね。特に水の表現は素晴らしい。今までこんなの見たことないです。
「意地でもアナログ!」という近年のジブリとは逆に「使えるものはどんどん使ってこうぜ!」と新世代のアニメーション制作として最適化を極めた結果と言えるでしょう。マジすごいです。動く絵画みたい。
こういうのが作れるならCG制作も面白そうだと感じるのですが、リアルな映像制作の実態は、突き詰めるとプログラミングや物理シミュレーションなど理系の知識に依るものなので、見るほうだけを楽しんでるほうがいいと思います。
全体的に「ファンタジーに現実的なものを持ち込むべきでない」と強く感じさせられました。