2015/07/28


先週末の第68回富士登山競争・頂上コース、奇跡的に完走できました!

タイムは4:22:23。リミットまでの7分半は、人によって 長くも短くも感じるでしょうけど 、僕にとってはこれ以上縮めることのできない時間です。

ダメ元で挑んだ大会だったので、とりあえず五合目までは絶対進もうという程度の意気込みでしたが、最初から登りでの失速は目に見えていたので、スタートの富士吉田市役所から中ノ茶屋(0:36:xx)までのロードで目一杯稼ぎ、馬返し(1:05:28)までは割りきって早歩きを織り交ぜて進みました。

そこから5合目(2:04:12)までは試走の甲斐もあって順調だったものの、問題の未踏区域である山頂コースに入ってからは、ランニングとまったく別物のスキルが必要だったのです。

とても走れる勾配ではないため、スピードは下がることがあっても上げることが難しく、五合目通過時間がクリアの条件にあげられるのがそのためであることを知りました。
そして一番の敵は高山病。酸素濃度と気圧の低下により、まるで泥酔した時のように気分が悪く、ふらふらと足元がおぼつかなくなるのです。

すでに七合目ではフルマラソン完走時以上に疲弊して、歩くことすらうんざり。吐き気がしても何も出ないし、両足は少しでも動きを乱すとすぐ痙攣してしまうくらいスレスレに消耗していることがはっきりと感じられます。

八合目(3:49:35)前後ではとうとう両手を使って這うような態勢で進むのが精一杯となりました。両手を使って下半身を休ませながら進むなどというレースは今まで経験がありません。
富士登山競争では「上を見るな」とは聞いていましたが、首を上げることすら億劫で、ずーっと前の人のシューズの動きを追っていただけだったのはよく憶えています。


永遠とも思える長い苦しみの中、いつしか、遠くに聞こえる声援でゴールが近づいてきたことを知り、霧に溶けて白くなりかけた意識に色が戻りました。
最後の気力で徐々にペースを上げる周囲のランナーも、その段階ではみんな四つん這。雲の中を進む満身創痍の行軍は、ああ、全員がもう限界なんだ、と奇妙な連帯感すら感じる不思議な世界です。

応援のためだけに早朝から山頂に駆けつけてくれていた仲間たちの顔を認め、ようやく顔が緩みました。
焦りで歩を早めようとした途端足が攣りかけたけど、数歩先のゴールに勢いで飛び込みます。最後だけは笑顔でいようしたのに、写真の表情はやっぱり苦悶に満ちていました(笑)

応援の仲間に抱きつき、ともに完走した周囲のランナーと健闘を讃え合う最高の時間を、短いながら過ごし、惜しみながらも帰りのバスのためにすぐ下山。
この後、下り用の山道を自力で10km、そしてバスと電車に4時間揺られるという大変スパルタンでハッピーな長い一日。二度と忘れることができないけど、今のところもう二度と味わいたくありません(笑)

こうして僕も、市民ランナーのグランドスラム(42kmを3時間以内・100kmを10時間以内・富士登山競走山頂完走)の一角を制覇することができました。
ほかの2つは全く達成できる気がしないけど、今回の完走は間違いなくこれからの自信につながると思います。

(追記 8/12)

僭越ながら、富士登山競走の完走について僕なりの攻略法を書いておきます。
携行補給物は120kcal程度のジェルを三本とMUSASHIのニー、それに塩熱サプリです。
そのほか、頂上で寒さをしのいだり下りのために使う、パッキングウインドブレーカーや手袋やマスクなどを、パンツのポケットやFlipBelt(揺れにくいのでおすすめ!)に入れて持って行きました。
走力は、Cブロックスタートで4:22:23ゴールのギリギリランナーです。

■スタート~中ノ茶屋(0:36:xx)
圧倒的に登り練習が不足していてロードばかりやっていたので、中ノ茶屋までのアスファルトでできるだけ稼ぐという作戦にしました。あとあと、これが功を奏し、後半の渋滞でのロスが減ったと思います。
スタートしたら、流れが遅いうちにできるだけ抜きながら進み、登りに入る前に周囲がBブロックばかりの集団に突入。そのまま脈拍170以下のペースを維持し、40分以内で中ノ茶屋に到着できるようにしておきました。
富士登山競走は、複合的なロードコンディションの組み合わせなので、登りが苦手とか、ロードは得意という人は、得意分野で稼いでおいたほうがいいと思います。

■中ノ茶屋~馬返し(1:05:28)
中ノ茶屋からやや荒れた舗装道に入り、勾配もきつくなるのでスピードも出しにくくなります。
よって、馬返しまでは無理して走ることはせず、むしろ大股で早めの歩き登りが多くを占めました。スピードはやや落ち、周囲にも抜かれることが多くなって焦りますが、心拍とふくらはぎの消耗が抑えられます。
五合目以降は更に足を酷使するので、限界まで疲労しないギリギリを見極めたペースにします。馬返しまでの距離を試走で掴んでおくと、ペースを上手にコントロールできるでしょう。
ここで給水を行い、MUSASHIのニーをとジェルをすばやく一本入れました。
1時間8分までに到着すれば、ゴールの可能性が高いと言われます。

■馬返し~五合目/佐藤小屋(2:04:12)
馬返しから先は完全にラフロード。トレランの登りと同じで、全体の9割以上を歩きで進みます。
たまにある勾配の緩やかな区間だけコツコツ走り、細い道で渋滞した場合は、敢えて休むか、余裕があれば左右のバンク使って小走りにして追い抜くなどしてもいいでしょう。ただし、絶対に歩を止めないようにしてください。
僕の場合、馬返しまでの歩きを変えずに進み、抜き抜かれがほとんどなかったように思えます。
最後のアスファルトに出た時、山頂コースと五合目コースが分岐します。五合目ではアスファルトを右に走ってゴールを目指しますが、頂上コースは再び山道に入ります。この短い山道を登り切ったところが佐藤小屋です。
ちなみにこの道は渋滞が起きやすく、関門スレスレのタイムだと怒号飛び交う修羅場になると聞いたことがあります。精神衛生的にも、ここは早めに通過したいところです。
五合目関門の佐藤小屋を2時間10分以内で通過できたら、頂上クリアが現実的になります。逆にそれ以上だと、この先の過酷な登りでペースを上げていく必要が出てきます。個人的印象ではそれはとても難しいことです。
佐藤小屋の関門先の給水で、ニーをもう一本とやはりジェル。低温下で汗をかかなくなるので、水はほどほどでOK。飲み過ぎるとトイレロスや体調不良につながる可能性があります。

■五合目~八合目(3:49:35)
あとはほぼ走ることはありません。森林限界に達するまでのわずかな林の中に平らな道があるので、ここだけ走っておきます。それ以降ゴールまでに走った距離は、トータルで100mも無いと思います。
次の給水で必要に応じて最後のジェルを入れておきます。七合目辺りに達すると、高山病で気分が悪くなり、口にモノを入れたくなくなってくるからです。
頂上までは、基本、つづら折りで足元がとられるような悪路が延々と続きます。走ることそのものが困難なコンディションなので、佐藤小屋までに必要なタイムをクリアしていたら、とにかく頂上まで足を持たせるつもりで歩きます。
スピードは必要以上に上げることはありませんが、極端に下げるのもダメ。足が攣って動けなくならないスレスレを維持します。段差の大きい階段はできるだけ大回りで避け、筋肉疲労の軽減に努めてください。
徐々に症状の出る高山病は想像以上に厄介で、泥酔したかのような吐き気とふらつき(山小屋のフラットな通路でよく感じます)が続き、歩くのも億劫になるでしょう。この耐性の弱い人は大変つらいと思いますが、ここで休むと、泣くに泣けない結果となります。呼吸を意図的に深く、そして回数を増やし、酸素を取り入れていきます。
七合目以降は、手を使わないと登れないような岩場が徐々に現れますが、実はこの岩場は足を休ませるチャンスなので、余力のある上体を存分に使ってフォローして下さい。イレギュラーな岩場を一気に登ろうとすると足攣りにつながるのでくれぐれもご注意を。
また、山小屋は◯合目にいくつもあるので惑わされないように。予め登山道のマップで山小屋の名前を知っておくと目安の助けになります。
逆に、トイレと水分補給のタイミングは多くなるのでその点の安心感はあります。どちらも有料なので、500円玉1枚と100円玉5枚を持って行くといいでしょう。
とはいえ、汗は既にかかなくなっているはずなので過剰な給水は不要です。
八合目(富士山ホテル)通過の最低目安は、3:50:00。この時間内に通過できたら、そのままのペースで完走できるはず。

■八合目~ゴール(4:22:23)
残りの40分は決して油断しないように。3:50:00はこれまでのペースを乱さずスムーズに進めた場合の目安です。
再び岩場が増え、ゴール間近まで手を使う機会が増えます。周囲も徐々にペースが上がってきて列が乱れてくるので、転倒しないよう注意。
また、列が乱れることで山頂直前にボトルネックが生じ、ちょっとした渋滞を引き起こしています。本当にギリギリだと、ここで思わぬストップやトラブルに巻き込まれるかもしれないので、やや余裕を持ってたどり着けるのが理想です。
また、頂上コースでは、よく「上を見るな」という教訓を聞きます。これには2つ理由があり、ひとつは姿勢の問題で、足元を見ていないと不規則な路面に足を取られやすいということ。もうひとつは、先を見てうんざりしてしまう精神的な問題にあります。ただ、富士登山道は勾配が激しいぶん、遠くに見える目標も案外近づくのが早いので、僕はチラチラ次の小屋を確認して進みました。同様に時計の残時間もチェックしておきましょう。
残り時間次第では焦りも出てきますが、むやみに心拍アップや足攣りを誘発させないよう、じっくり進みます。
鳥居が見えてきたらゴールはもうすぐそこ。
ゴールは鳥居を抜けたあと、10mほど左にカーブした階段の上にありますが、アーチなどがないので距離感はわかりにくいかもしれません。
残り数十秒というケースでは、この位置関係の把握が悲喜を分けます。応援の声が「走れー!」と言っているなら、最後の力を振り絞って急いでください。

以上となります。
頂上コースの攻略は折れない心が重要です。
苦しくても、辛くても、止まらないように、見えない果てに向かう気持ちを持って挑んでください。


(おまけ:下山について)
五合目から出ている、荷物受け取りがある北麓公園(2015)への最終シャトルバスが14時発なので、頂上にゴールしても余韻を噛みしめる時間はそこそこで、12時には下山を始めたほうがいいでしょう。
(有料バスを使う場合はこの限りではありません)
この時に使う下山道は、路面性格上、どうしてもローカットのシューズだとたっぷりと砂が侵入します。この砂は鉄分を含んでいて赤いうえ、シューズのメッシュ目にも詰まるので落とすのがとても大変です。
この汚れの度合とシューズへの負担から、富士登山駅伝常連には使い古したロードシューズを使うランナーが少なくありません。
したがって、最悪このレースをもって廃棄するというつもりがなければ、淡い色のシューズや靴下は避け、できれば足首から下を覆うスパッツを用意しておくと便利です。
また、雨や霧で湿っていない快晴下では、下山道に砂煙が発生するので、マスクや口を覆うバフなどを用意していると便利です。

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