2012/10/17


ワコムの液晶タブレットCintiq22HDのレンタル期間が満了しました。

期待に胸躍らせての初めての液タブ…でしたが、実はあまり使わなかったんです。
デスクに載っていたのは最初の2日間だけで、急ぎの作業が入って慣れたペンタブレットに切り替えたらそのまま使用することなく返却することになりました。デスクをあれだけ占有されてるとできないことも多いですしね。
以下にレビューを書いていきます。最終的に「ペンタブのほうがいい」という結果になってしまったので例によって"~が"とか"しかし"とかの多い文章になります。(苦笑)
なお、僕が使っているソフトはPhotoshopCS5とCLIP STUDIO PAINT(旧・Illuststudio)です。

結論から言うと、ペンタブレットの違和感に戸惑うような「つい先日まで紙に描いてた」人がすぐにPCでのペイントに入るには便利かもしれないのですが、すでにその壁を越えて15年近くペンタブレットに慣れているとむしろ液晶タブレットに違和感があるという感想です。

一番困ったのがキーボードショートカットを併用すること前提の作りになっていないところ。
目の前に巨大なキャンバスがあると、パレットや筆箱の役割たるキーボードの居場所がなくなっちゃうんですよ。液晶タブレットとの間隙では使いづらいのなんの。キーボードって距離おいた場所にあるモニタの間にあってこそ快適に使えるものだったんですね。
そのかわりにショートカットを設定できるファンクションキーが左右8個ずつ計16個ついていてここにショートカットを割り当てることはできるのですが、右手には常にペンを持っているので効率よく使えるのは左の8つだけ。(左利きだと逆の8つ)
ショートカットの代わりにラジアルメニューという拡張メニューを割り当てることでワンクッションおいて一つのファンクションキーで複数のメニューにアクセスできる仕様にはなっているものの、使いやすく自分なりにカスタマイズされたキーボードの膨大なショートカットにはまったく及びません。
ブラシサイズを変更したりズームやスクロールに割り当てたトラックパッドもイマイチ反応がよろしくないのであまり活用できませんでした。
ペンの逆についている消しゴムスイッチもペンほど精度が良くないので結局消しゴムもショートカットでペン使用の消しゴム。
ツール切り替えやレイヤー操作をほとんどせずにざくざくと描きこむようなタッチの人には有効かもしれませんけどね。

一番期待していた「紙への描画同様ペン先に視点を置いて手元だけで作業を完結できるところ」もそううまくはいきません。実際に使ってみないとわからないもんです。
普段僕は反応範囲22×16cm程度のペンタブレットを使っていて、これで24インチモニタの全画面をフォローしています。細かい作業も拡大ツールを使って一時的に絵の一部をこの小さな範囲に割り当てるわけです。
逆に言えば24インチ全体に手を伸ばさなくてもその1/3程度の範囲内で手首を上手に使っていれば画面全体にカーソルを運べるということです。
はい、もう何を言いたいかお分かりですね。
液晶タブレットをフル活用するためには22インチ内全体に手を動かしている必要があるんですよ。これ、すごく疲れるんです。肩とか手首、そして普段は使わない上腕。上体を乗り出さないと描けない場合もありました。
24インチと同等の紙に描くときも、意識はしてませんけど結構紙を動かしているんですよ。自然に液タブを動かそうとしてハッとさせられることでしょう。そこには数gと8kgという数千倍の差があり「ああ、これは紙と違う」とすぐに直感します。
PhotoshopにもCLIP STUDIO PAINTにもキャンバス回転ツールがありますし、方向問題は物理的に解決する必要はありません。
これら角度や方向を変更させる付属のスタンドは非常に使い勝手よかったんですけどね。

そして重要なのがこれをメインモニタにしていると絵以外の作業もこれで行うことになるということです。
視野角は20度くらいまで鮮明なのでスタンドを調整して普通のモニタ同様垂直にしてれば画質に強烈なこだわりがない限りは問題ないのですが、絵の作業を中断して事務作業ツールに切り替える場合はタブレットとマウスとキーボードの三種が手元に置いてあるほうが圧倒的に使いやすいですし、懐かしのツインファミコンやテレビデオにあったようなパッケージングされた機械のトラブル対応や耐用年数も気になります。
何より放熱についてはウワサ通り暑いです。曇ってると肌寒くなる時期の使用でも気づくと首から上が熱を持ってます。モニタと違って至近から熱が来るのでこれはきつい。夏のことは考えたくないです。


以上、全部「慣れれば大丈夫」かもしれないですが「ペンタブレットと液晶タブレットどっちか選べ」って言われたら僕はペンタブレット選びます。
一長一短ですし、環境とタッチでいろいろ意見は違うと思いますけど。"今の"僕が総合的に判断したら、です。

ただ、以前店頭で触ったCintiq24HDにはトラックパッドではなくホイールパッドがついていたのですが、これは非常によかった!
ブラシサイズの変更が割り当てられていて、くるくる回すとスムーズにサイズが変えられるのが非常に心地よく、今回のレンタル申込みに至ったきっかけになったくらいです。
また、その上の最上位機種は画面全体がタッチパネルになっているということなので、拡大縮小スクロールが左手のスワイプやタップなどのジェスチャーで可能になっているとのこと。それなら紙を扱うようにできるかもしれません。
まあ、どちらも目玉が飛び出るような額なんですが(笑)

というわけで、レビューがCintiq22HDをちっともほめていない内容となってしまいましたが、ペンタブレットはもはや手放せないのでワコムさんにはこれからもそちらの進化に対する注力に期待したいところです。
intuous5にはホイールパッドがついているので買うならそちらかなあ。