2015/08/21

話題の佐野デザインの影にも、ビジュアルデザインについて、常に喧々諤々はあるものです。
今回、ひとつ目に止まったので取り上げてみます。

「萌えキャラは海女を侮辱」三重・志摩市に公認撤回要求:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASH8F41HTH8FONFB005.html

詳細なデザインはリンク先を見ていただきたいんですが、三重県は志摩市のイメージキャラクターに、いわゆる萌えキャラが採用されたことで、物議をかもしているそうです。
簡単にいえば、このキャラクターが見た目より若い設定の割に性的なので、児童ポルノやら海女さんへの侮辱やらという批判のやり玉に挙げられ、撤回を求められているというお話です。

デザインやイラストって、機能をビジュアルに変換し、明快かつ扱いやすくするって概念なんで、きちんと目的に対して効果的に機能してさえいれば、個人的にはどっちでもいいと思います。

少し昔の話になりますが、ゲーム会社でキャラクターデザインをしていた頃、上から下りてくる女性キャラの仕様文書には、高い確率で性的ディフォルメを行うことが含まれていました。
会議で「"萌え"が足りねえんだよ!」とディレクターに怒鳴られたことがありましたが「じゃあ"萌え"って何ですか」と質問してみると、要するに、腰を肩幅より広くして巨尻化するとか、衣類を押し上げるくらい巨乳にして形をクッキリ見せるなど、要するに極端なセックスアピールを増やせって話だったのです。
肩幅より広い骨盤や、胸の形がクッキリする衣類の縫製など現実にはありえません。したがってリアルさとは遠い完成形になりましたが、ゲームのユーザー(特に男性)はビジュアルに、リアルさよりもセクシャルな記号を求めていたということです。
某おっぱいの揺れる世界的にバカ売れした格闘ゲームを開発していた会社なので、そういうマーケティングにおいては間違いなく信用が置ける話でしょう。
(僕が関わっていたのは別のプロジェクトです)

で、志摩のキャラクターに話が戻るんですが、自分の視点をかなり強引に一般化しても、このキャラクターがセックスアピールたっぷりであることは否定できません。
率直に言って、ゲームのキャラデザと同じ「特定の層の男性に向けて性的魅力を喚起させる」デザインだと思いました。そこが批判される要素なんでしょうね。
とはいえ、それを否定するつもりもないんです。そういうキャラクターが商業的に大きな効果を上げているメディアも多いのですから。

問題は、これが「誰に対して」広告機能を果たすためのデザインかってことなんです。

秋葉原限定でポスターが貼られ、志摩への聖地巡礼を促すようPRするような機能を目的としているならば、よくできた成果物だと思います。
だってこういうデザインを好む人達に向けて機能するよう作られているのがはっきりしているのだから。
これがモチーフになっている実在概念に大して「侮辱だ」批判されたら、あの町のメイドカフェやコスプレショップはとっくに消滅しているでしょう。

しかし、自治体の代表として、限定しない広い層にイメージをPRする機能を目的にしているというなら、話が変わってきます。
僕は仕事柄、同世代の他の人より、こういうアニメやゲーム的なビジュアルに対して寛容だとは思ってますが、それでもこれを見たところで自治体のシンボルとしてはどうかと思います。この自治体は「セクシーな若い海女さんが売りなんだなあ」という感想しか抱けません。その感想から、どういう行動をするかは人それぞれですが。
あまつさえ、これを見て志摩に行こうと思ったりしないし、このキャラがプリントされたおみやげやグッズを買おうとは絶対に思わないでしょう。

キャラクターの撤回を求めている女性団体(?)の視点はまた全然別のところにあり、僕はそれもまたちょっと極論だと思いましたが、このデザインを自治体のシンボルとして通すならば、彼女たちも含めたすべての人に「このデザインはこういう機能を持たせるためにこうなった」ことを説明し、納得させられることが必要です。それがデザインだと思います。

今回の場合、少なくとも僕にそれは思いつきませんでした。

0 コメント:

コメントを投稿